こだわり住職のよもやま話

2014年11月

雨の本山も悪くありません

2014年11月27日

総本山光明寺女人坂

25日に本山へ行って来ました。組寺の快友寺さんが団体参拝旅行を開催されたので、檀家の安部 正さん夫妻と私の三名も混ぜてもらい、二泊三日の少々贅沢な旅での訪問でした今回、我々が無理言ってこの参拝団に参加させてもらったのは、本山納骨をしたかったからです。安部夫妻は昨年亡くなられたお母さん(和子さん)の納骨で、同行した私も昨年亡くなった父を連れて行きました。父は生前に一度訪れていますが、信心深い人でしたから、今回法然上人のおそばに入れたことをきっと喜んでくれたことと思います。以前”本山納骨のありがたみ”のタイトルで書いていますが、いまだに一般人感覚の私にとっては、我が本山の納骨堂は実にありがたい場所です。日本浄土教の祖である法然上人の、まさにすぐそばに入れるのですから。ですからその宗派の坊さんをやってる私が言うのもなんですが、良い親孝行が出来たと思っています。(それを言うのなら存命のうちに、なんですけど・・・)

本山御影堂

前日までは三連休でした。だから、とんでもない混雑だったことでしょう。しかし、我々が訪れたのは連休明けの平日です。しかも、朝から傘が手放せなせない少々肌寒いお天気でした。これなら「そんなに混雑していないかも?」なんて淡い期待をしたのですが、やはり見事に裏切られました。我々は9時過ぎには到着したのですが、すでに大型観光バスが乗客を降ろす順番待ちをしていました。考えて見れば、昨日までの連休が大混雑するのは当然ですが、我々のような団体ツアー組は少しでも混雑を避けるために連休明けのこのタイミングを狙ってくるのが定石です。みんな考えてることは一緒なんですよね。

本山薬医門

境内の大部分はすでに真っ赤に燃えていましたが、本山で一番有名な景観となる薬医門の周辺(もみじ参道)は、日照時間が少々短いので色づくのは一番遅くなります。ポスターなどでよく目にする一面真っ赤な状態が見られるのはたぶん今週末からでしょうが、これくらいの状態も悪くありません。傘が不要な方がお参りには都合が良いのですが、しっとりと濡れたもみじも素晴らしいものです。雨の本山も悪くありませんね。時間があればじっくり撮影してみたかったのですが、納骨回向で皆さんをお待たせしている身としては、写真など撮ってる場合じゃなかったので叶いませんでした。こういう場所での撮影(風景写真)だと、人が写らないようにしたいところなんですが、さすがにこの時期は無理です。

最後の大物かも?

2014年11月17日

本堂内陣の荘厳具として、おそらく最後の大物となる人天蓋が先月納品されました。これで高額商品の設置は一応終了です。思えばずいぶんお金を使っちゃいました。この手のお買い物は想像以上にお高いものです。しかし一度据えると何十年いや場合によっては何百年になるのですから、安易な妥協は禁物です。気軽に買い換えるものではないですから、よほど覚悟して揃えていかないと後悔することになります。それにしても、この寺のかつての状況を考えると、「よくここまで出来たな」が正直な感想です。本当に有りがたいことです。

人天蓋

本日は本堂の荘厳についてのお話しです。例によって一般人感覚での率直な感想を交えながらの解説です。浄土宗系の本堂の荘厳(お飾り)は、正面奥から順に上げると、まず弥陀三尊像(阿弥陀如来・観音菩薩・勢至菩薩)が納められる三尊宮殿と、それが乗っかる須弥壇が中央に据えられます。これが標準(らしい)ですが、三尊宮殿が省かれる場合もあります。その場合はご本尊背後の壁面全体を金箔や彩色等で煌びやかに仕上げて、御本尊の直上には仏天蓋という荘厳具が大抵設置してあるものです。御本尊が大型になると三尊宮殿に納めるのは大変なので、こちらのケースが多くなるかもしれません。

次に控える大物は前机です。ご本尊の前に据えられる彫刻や彩色が施された豪華な大型の台で五具足が乗ります。具足はご家庭のお仏壇でも目にすることが出来る香炉・燭台・花立のことですが、お寺の場合はこの前机に乗せる花立ての使い方が異なります。通常は生花ではありません。金箔が施されたハスの花(木製彫刻)が生けて(?)あるのが普通です。常花とよばれる、いわば超高価な造花(?)が設置されます。「じゃー生花はどうするのっ」て話しになりますが、これはケースバイケースです。前机に追加の花瓶を設置して生花を飾ることもありますし、山寺のように別の台を持ち出して(花粉や花びらで前机が汚れるのを嫌って)飾ったりします。

光明寺本堂内陣の荘厳

そして、大抵の本堂ではその手前に住職(導師)が着席する導師席が配置されることになるのですが、大寺だとその導師席と前机の間に"礼盤"という特別な席が設けられたりします。山寺は御本尊の右隣、大日如来さんの御前に設置していますが、これが広い本堂でしたら、前机(写真では金襴の布が掛かっている台)の前に鎮座します。礼盤が通常は導師席の前に設置される理由、或いはその用途ですが、解りやすいのは本山の御忌会法要を見れば一目同然です。法要の冒頭で代表の僧呂がまずこの席に着座して、御法主の代わりに歎徳之疏という重要な文章を読みます。その代読が終了してこの席が空くと、今度は読経の進行役(読経中に常に最初の発声を行ってリードする僧侶)が、この席に着席します。本山や大寺だと重要な法要は大勢の僧侶が一堂に会して読経を行いますから、その際に先導する僧侶の定位置が、この"礼盤"なのです。ですから、そういうことが無い山寺では礼盤をこの用途で使うことはまずありません。そもそも本堂のサイズからして物理的にも設置は難しくなります。それで、山寺では大日如来の御宝前に設置してあり、大日祭などの法要で私が着座する導師席となっています。

大日如来御宝前の礼盤

これ以外にも床に置いてある荘厳具としては、前机の左右や須弥壇のそば等に置くことが多い台燈籠(写真では常花の真後ろに隠れています)が内陣荘厳の定番です。山寺は導師席のそばにでっかいキンス(鐘)や木魚がありますが、大寺だと導師はキンスや木魚を叩いたりはしない(お手伝いの僧侶が担当します)ので、この位置に大型のキンスや木魚は無いものです。写真では、お葬式の時に使用する如鉢(シンバルみたいなやつ)と楽太鼓も写っています。こうやって見るとけっこうごちゃごちゃいろんなものがあるものです。金額に換算すると、山寺でも結構すごいことになります。(いつもながら俗っぽい発言で申し訳ありません)

さて、床面はこれくらいにして、次は天井からぶら下がるやつです。まず欠かせないのが御本尊の前に下がる吊り灯籠でしょう。阿弥陀様をほんのり照らしてくれる重要な照明です。そして、一番の大物といえば、通常前机の横やその少々前あたりでだらりとぶら下がる憧幡でしょう。超豪華な七夕飾りみたいなやつです。山寺に納入された際の記事がこちらですが、とても嬉しかったものです。なんてったって非常に目立ちますからね。そして、とどめの大物が今回納品された人天蓋というキンキラのいわば傘です。

人天蓋を見上げる

私が着席する導師席の真上に設置してあります。これって立派なお坊さんをますます立派に見せる為のアイテムなのかもしれませんね?(だったら私には似合わないのであるが)この憧幡一対と真ん中にぶら下がる人天蓋は、いわば天井を飾る荘厳具としてはお約束の定番です。ここまで揃えば天井関係は充分です。ただし、今回納入された人天蓋は、ある意味非常に贅沢な荘厳具です。とりわけ山寺のように少々奥行きが手狭な内陣にぶら下げると、お参りのみなさんからはほとんどその存在が解らないらからです。七桁コースの贅沢品ですが、悲しいかな手前の大欄間とすだれ(御簾という)に隠れて、のぞき込まないとほとんど見えません。「高価なお品なんだから、見えるようにもっと下げたいなー」と思うのが凡夫の常ですが、そうすると今度は邪魔になるし、嬉しいけど少々悩ましい存在なんです。まあ、ギリギリもう一尺程度は下げてもいけそうなので、はせがわ美術工芸の村嶋さんには申し訳ないのですが、後日再調整をお願いしました。まことに迷惑な客であります。しかし責任総代の面々もさかんに言ってましたから、これもやむを得ません。

平成26年十夜会終了

2014年11月09日

平成26年十夜会の朝

毎年、本堂前の大銀杏が紅葉するこの時期に山寺は十夜会が開催されます。昨日はお天気が下り坂だったせいか、好天が続いたここ数日に比べると朝の冷え込みはそれほどではありませんでしたが、お参りの皆さんにとっては堂内は少々肌寒い状態でした。それで、ついに今シーズン初の暖房入り法要となりました。

開始の2時間前から、家庭用ですが大型のファンヒーター二台と昔ながらの対流式ストーブ二台(電源不要のやつ)を点火しました。山寺は小さな本堂ですが、天井の高さだけは以前の本堂と同等以上です。ですから内部の容積は意外と広く室温の上昇に時間がかかります。しかし今時の建物ですから気密性や断熱性能は悪くありません。一度暖まれば暖房を止めてもいつまでも暖かです。旧本堂はありったけのストーブをガンガン焚いてもまったく暖まらなかったのですから今は幸せです。

ただし、昨日は少々不都合もありました。ファンヒーターなら温度設定も可能ですが、対流式ストーブはお構いなしです。勤行の最中に温かくなりすぎて私は汗びっしょりです。読経中に導師席を離れてストーブを消すわけにも行きませんし、こりゃ衣装を考えないといけませんね。さすがに、この時期に夏物ってわけにはまいりませんから、衣と袈裟は冬物でも、その下に着込む襦袢や白衣などは完全に夏仕様にしとかないとあきません。一番具合が良いのは全てファンヒーターで暖房にすればよいのでしょうが、旧本堂時代に使っていたこの手のストーブがゴロゴロしてますから、使わないわけにもゆきません。これって贅沢な悩みかもしれません。

平成26年11月8日十夜会 お説教 萩原賢良師

さて、昨日のお十夜は、福岡県古賀市からお越し頂いた萩原賢良師にお説教をして頂きました。賢良師は私と同じく一般人からお坊さんになられた方でした。それもあってか、なんだか話しが合っちゃって、皆さんが待ってるのに控えの間でいろいろ話し込んで開始が少々遅くなってしまいました。

次の法要は大晦日になります。それまで、しばらく山寺は靜かな日々となります。
 

お寺を使ってください

2014年11月02日

芳右さんの一周忌法要にて

新本堂の完成以降、山寺でも年回忌法要を本堂で行うケースが多くなりました。先月も山口芳右さんの一周忌法要を本堂で開催しましたが、いろんな意味で具合もよろしく、施主はもちろんのこと、ご親族の皆さんにも喜んで頂けた法要だったと思います。そして、今回の法要を誰よりも喜んでくださったのは、お浄土におられる芳右さんだと思っています。

故人は私が山寺の坊さんになった時の責任総代さんでした。当時の光明寺は今となっては想像もできないようなボロ寺で、本堂がめちゃくちゃ古いのはともかく、やたらたと広い周囲の寺所有地が荒れ放題でした。法要が近づくと責任総代が必死で草刈りをして、なんとか体裁をつくろうのが実態でした。芳右さんはそんな大変苦労をした時代の役員さんでした。責任総代職を引かれてからも、本堂建てかえ工事中の様子を一番よく見に来られた方でもありました。御本尊の前に飾られたご自身の遺影をお浄土から眺めながら、『あの光明寺がとうとうここまでになったわ』と、きっと感慨にふけっておられることでしょう。

さて、冒頭に述べた通り、近頃は本堂での年回忌法要が定着しつつあります。なぜなら本堂だと全員イス席でやれるというのがまず嬉しいことだからです。今日、年回忌の読経は昔にくらべればずいぶん短くなりました(そのほうが喜ばれます)が、それでも一時間位は読経にお付き合いして頂く(それが修行なんです)ことになります。訳のわかんない難しいお経を身じろぎもせず聴いているというのは、結構つらいものであります。従来型の自宅開催となると、読経中はもちろんのこと、その後のお食事でも正座となるので大変です。今どき毎回座敷に座ってお食事を頂いている家庭なんてほぼ皆無でしょうから、自宅で行う法事の会食とは、ある意味とても特殊なスタイルです。そして、それは、ご婦人方にとってはとりわけ酷なことになります。殿方はあぐらを組むことも可能ですが、ご婦人方はそうもいきませんからね。年齢層が高くなりがちなこの手の行事だと、膝や腰に問題を抱える方も多くなります。そういうこともあって、イス席での開催はみんなが幸せになれます。だから私は本堂開催をお勧めしています。

それから、本堂での開催は私にとっても喜ばしいことであります。それは読経で使用する仏具が本格的になるからです。やはり、本堂に据えられたキンスや大きな木魚の音は良いですからね。私の読経も実力以上のレベルに聞こえるんじゃないかな(?)と思います。少なくとも、雰囲気としてはかなり贅沢な感じになります。

最後にもう一つ理由を上げておきます。お寺は本来檀家さんのものです。だから積極的に使って欲しいのです。山寺などその典型です。檀家が資金を出し合って240年ぶりに建てかえた本堂です。みなさん、けっこうな金額の負担をしてくださった。正直なところ、よく集まったと思います。だからこそです。使って頂きたいのです。「元を取らなきゃ」なんてまでは言いませんが、せっかく苦労して建てた皆さんのお寺です。飾ってたってしかたありません。やっぱ「使ってなんぼでしょ」と私は思うのであります。

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