こだわり住職のよもやま話

最後の大物かも?

2014年11月17日

本堂内陣の荘厳具として、おそらく最後の大物となる人天蓋が先月納品されました。これで高額商品の設置は一応終了です。思えばずいぶんお金を使っちゃいました。この手のお買い物は想像以上にお高いものです。しかし一度据えると何十年いや場合によっては何百年になるのですから、安易な妥協は禁物です。気軽に買い換えるものではないですから、よほど覚悟して揃えていかないと後悔することになります。それにしても、この寺のかつての状況を考えると、「よくここまで出来たな」が正直な感想です。本当に有りがたいことです。

人天蓋

本日は本堂の荘厳についてのお話しです。例によって一般人感覚での率直な感想を交えながらの解説です。浄土宗系の本堂の荘厳(お飾り)は、正面奥から順に上げると、まず弥陀三尊像(阿弥陀如来・観音菩薩・勢至菩薩)が納められる三尊宮殿と、それが乗っかる須弥壇が中央に据えられます。これが標準(らしい)ですが、三尊宮殿が省かれる場合もあります。その場合はご本尊背後の壁面全体を金箔や彩色等で煌びやかに仕上げて、御本尊の直上には仏天蓋という荘厳具が大抵設置してあるものです。御本尊が大型になると三尊宮殿に納めるのは大変なので、こちらのケースが多くなるかもしれません。

次に控える大物は前机です。ご本尊の前に据えられる彫刻や彩色が施された豪華な大型の台で五具足が乗ります。具足はご家庭のお仏壇でも目にすることが出来る香炉・燭台・花立のことですが、お寺の場合はこの前机に乗せる花立ての使い方が異なります。通常は生花ではありません。金箔が施されたハスの花(木製彫刻)が生けて(?)あるのが普通です。常花とよばれる、いわば超高価な造花(?)が設置されます。「じゃー生花はどうするのっ」て話しになりますが、これはケースバイケースです。前机に追加の花瓶を設置して生花を飾ることもありますし、山寺のように別の台を持ち出して(花粉や花びらで前机が汚れるのを嫌って)飾ったりします。

光明寺本堂内陣の荘厳

そして、大抵の本堂ではその手前に住職(導師)が着席する導師席が配置されることになるのですが、大寺だとその導師席と前机の間に"礼盤"という特別な席が設けられたりします。山寺は御本尊の右隣、大日如来さんの御前に設置していますが、これが広い本堂でしたら、前机(写真では金襴の布が掛かっている台)の前に鎮座します。礼盤が通常は導師席の前に設置される理由、或いはその用途ですが、解りやすいのは本山の御忌会法要を見れば一目同然です。法要の冒頭で代表の僧呂がまずこの席に着座して、御法主の代わりに歎徳之疏という重要な文章を読みます。その代読が終了してこの席が空くと、今度は読経の進行役(読経中に常に最初の発声を行ってリードする僧侶)が、この席に着席します。本山や大寺だと重要な法要は大勢の僧侶が一堂に会して読経を行いますから、その際に先導する僧侶の定位置が、この"礼盤"なのです。ですから、そういうことが無い山寺では礼盤をこの用途で使うことはまずありません。そもそも本堂のサイズからして物理的にも設置は難しくなります。それで、山寺では大日如来の御宝前に設置してあり、大日祭などの法要で私が着座する導師席となっています。

大日如来御宝前の礼盤

これ以外にも床に置いてある荘厳具としては、前机の左右や須弥壇のそば等に置くことが多い台燈籠(写真では常花の真後ろに隠れています)が内陣荘厳の定番です。山寺は導師席のそばにでっかいキンス(鐘)や木魚がありますが、大寺だと導師はキンスや木魚を叩いたりはしない(お手伝いの僧侶が担当します)ので、この位置に大型のキンスや木魚は無いものです。写真では、お葬式の時に使用する如鉢(シンバルみたいなやつ)と楽太鼓も写っています。こうやって見るとけっこうごちゃごちゃいろんなものがあるものです。金額に換算すると、山寺でも結構すごいことになります。(いつもながら俗っぽい発言で申し訳ありません)

さて、床面はこれくらいにして、次は天井からぶら下がるやつです。まず欠かせないのが御本尊の前に下がる吊り灯籠でしょう。阿弥陀様をほんのり照らしてくれる重要な照明です。そして、一番の大物といえば、通常前机の横やその少々前あたりでだらりとぶら下がる憧幡でしょう。超豪華な七夕飾りみたいなやつです。山寺に納入された際の記事がこちらですが、とても嬉しかったものです。なんてったって非常に目立ちますからね。そして、とどめの大物が今回納品された人天蓋というキンキラのいわば傘です。

人天蓋を見上げる

私が着席する導師席の真上に設置してあります。これって立派なお坊さんをますます立派に見せる為のアイテムなのかもしれませんね?(だったら私には似合わないのであるが)この憧幡一対と真ん中にぶら下がる人天蓋は、いわば天井を飾る荘厳具としてはお約束の定番です。ここまで揃えば天井関係は充分です。ただし、今回納入された人天蓋は、ある意味非常に贅沢な荘厳具です。とりわけ山寺のように少々奥行きが手狭な内陣にぶら下げると、お参りのみなさんからはほとんどその存在が解らないらからです。七桁コースの贅沢品ですが、悲しいかな手前の大欄間とすだれ(御簾という)に隠れて、のぞき込まないとほとんど見えません。「高価なお品なんだから、見えるようにもっと下げたいなー」と思うのが凡夫の常ですが、そうすると今度は邪魔になるし、嬉しいけど少々悩ましい存在なんです。まあ、ギリギリもう一尺程度は下げてもいけそうなので、はせがわ美術工芸の村嶋さんには申し訳ないのですが、後日再調整をお願いしました。まことに迷惑な客であります。しかし責任総代の面々もさかんに言ってましたから、これもやむを得ません。

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