こだわり住職のよもやま話

お寺を使ってください

2014年11月02日

芳右さんの一周忌法要にて

新本堂の完成以降、山寺でも年回忌法要を本堂で行うケースが多くなりました。先月も山口芳右さんの一周忌法要を本堂で開催しましたが、いろんな意味で具合もよろしく、施主はもちろんのこと、ご親族の皆さんにも喜んで頂けた法要だったと思います。そして、今回の法要を誰よりも喜んでくださったのは、お浄土におられる芳右さんだと思っています。

故人は私が山寺の坊さんになった時の責任総代さんでした。当時の光明寺は今となっては想像もできないようなボロ寺で、本堂がめちゃくちゃ古いのはともかく、やたらたと広い周囲の寺所有地が荒れ放題でした。法要が近づくと責任総代が必死で草刈りをして、なんとか体裁をつくろうのが実態でした。芳右さんはそんな大変苦労をした時代の役員さんでした。責任総代職を引かれてからも、本堂建てかえ工事中の様子を一番よく見に来られた方でもありました。御本尊の前に飾られたご自身の遺影をお浄土から眺めながら、『あの光明寺がとうとうここまでになったわ』と、きっと感慨にふけっておられることでしょう。

さて、冒頭に述べた通り、近頃は本堂での年回忌法要が定着しつつあります。なぜなら本堂だと全員イス席でやれるというのがまず嬉しいことだからです。今日、年回忌の読経は昔にくらべればずいぶん短くなりました(そのほうが喜ばれます)が、それでも一時間位は読経にお付き合いして頂く(それが修行なんです)ことになります。訳のわかんない難しいお経を身じろぎもせず聴いているというのは、結構つらいものであります。従来型の自宅開催となると、読経中はもちろんのこと、その後のお食事でも正座となるので大変です。今どき毎回座敷に座ってお食事を頂いている家庭なんてほぼ皆無でしょうから、自宅で行う法事の会食とは、ある意味とても特殊なスタイルです。そして、それは、ご婦人方にとってはとりわけ酷なことになります。殿方はあぐらを組むことも可能ですが、ご婦人方はそうもいきませんからね。年齢層が高くなりがちなこの手の行事だと、膝や腰に問題を抱える方も多くなります。そういうこともあって、イス席での開催はみんなが幸せになれます。だから私は本堂開催をお勧めしています。

それから、本堂での開催は私にとっても喜ばしいことであります。それは読経で使用する仏具が本格的になるからです。やはり、本堂に据えられたキンスや大きな木魚の音は良いですからね。私の読経も実力以上のレベルに聞こえるんじゃないかな(?)と思います。少なくとも、雰囲気としてはかなり贅沢な感じになります。

最後にもう一つ理由を上げておきます。お寺は本来檀家さんのものです。だから積極的に使って欲しいのです。山寺などその典型です。檀家が資金を出し合って240年ぶりに建てかえた本堂です。みなさん、けっこうな金額の負担をしてくださった。正直なところ、よく集まったと思います。だからこそです。使って頂きたいのです。「元を取らなきゃ」なんてまでは言いませんが、せっかく苦労して建てた皆さんのお寺です。飾ってたってしかたありません。やっぱ「使ってなんぼでしょ」と私は思うのであります。

▲PAGETOP