こだわり住職のよもやま話

2011年5月

サントリーは立派だねー

2011年05月22日

星空.jpg

東日本大震災の直後から、企業CMは一切流れなくなりました。そして空いたこのCM枠を埋めるために、民放各社はACジャパン(旧公共広告機構)のメッセージ広告を流し続けました。それらのCMは大切なことを訴えていました。どのメッセージも良いこといってます。絶対に悪いことじゃないのです。でも私たちは、いわばお説教みたいなメッセージを連日聞かされ続けると、やはり嫌になっちゃいました。そう、「もう解ったから勘弁してよ」となりました。そして、やがてこの広告に対していろんな意見が吹き出して、何かと話題になったりしました。申し訳ないとは思いますがこれが世の常です。「絶対に良いこと、誰もが常に喜んで受け入れてくれる」なんてのは無いのです。人それぞれ状況は異なり受け取り方は違って来ます。これは仕方のないことです。

さて、今現在は、ほぼ通常に戻っています。ただし、いくつかの企業においては、今も被災者へのメッセージなどを前面に打ち出したCMを流しています。なかでも、サントリーが流しているメッセージ広告は実に素晴らしい。この企業の真摯な姿勢を見事にアピールしています。そのCMは、いわば「希望の歌」を有名人がリレー形式で歌い継ぐという異色のメッセージ広告です。私が子供の頃にヒットした「上を向いて歩こう」と「見上げてごらん夜の星を」の2曲を、さまざまな有名人が歌っています。まず、この選曲が見事でした。いずれも「明日への希望」を見事に歌い上げた坂本 九さんの名曲です。過去、この歌でどれだけの人々が勇気づけられたことでしょう。とりわけ団塊の世代にとっては忘れられない曲でしょう。その名曲をこのタイミングで取り上げたセンスの良さが光ります。しかも登場人物は総勢71人にも登ります。全員ノーギャラだといいます。すごいですね。サントリーは昔からウイスキーのCMで名作を出し続けて来た会社です。サントリー・オールドの有名なCMソングや、大原麗子さんの「少し愛して、長ーく愛して」のシリーズなど、懐かしく、そして素晴らしい名作のオンパレードです。うれしいことに、今ではYouTubeで検索すれば、それらを見ることも可能です。実に有りがたいことであります。最近では、本木雅弘さんと宮沢りえさん出演のお茶のシリーズ(伊右衛門)や、トミー・リー・ジョーンズさんの宇宙人シリーズ(ボス缶コーヒー)などの名作があります。サントリーは昔も今もCM企画力が飛び抜けて優秀です。だからこそ、今回こんなに素晴らしいメッセージ広告を発信することが出来たのでしょう。「サントリーは立派だねー」と声を大にして称賛したいものです。

しつこいですが、続編です

2011年05月19日

白川郷の周囲.jpg

今年の団体参拝の観光については、すでに永平寺と金沢兼六園のことを書きました。しつこいですが、またまた続編です。兼六園を後にした我々が次に訪れたのは、世界遺産の白川郷でした。ここは周囲を2千メートル級の山に囲まれた秘境です。まさに別世界でした。私の知っている場所で、似たような環境(秘境)といえば、平家の落人の里として知られる九州熊本県の秘境、五家荘あたりが真っ先に思い浮かびます。このあたりもすごいところです。なんと言っても道路事情が良くないので訪れるのが大変なんです。その点白川郷は、ついこの前開通した東海北陸自動車道の白川郷インターを降りたらすぐそこです。そして、その白川郷と高山市方面を結ぶ飛騨トンネルは10キロ少々あります。国内3番目の長さだそうです。このトンネルのおかげで、この地で生活している人々は、冬期でも安心して移動が可能になったのです。よかったですね。

白川郷の明善寺.jpg

さて、白川郷といえば、皆さんご存じの通り合掌造りの集落です。カメラを片手に散策しましたが、例によって私が一番気になったのは写真などでよく目にする茅葺きの民家群ではありません。集落内にある古いお寺の山門が実に印象深かった。真宗大谷派明善寺さんの門であります。(正式には鐘楼門と呼ぶ)ご覧の通り実に素晴らしい。まるで日本昔ばなしに出てきそうではありませんか。(例えが古過ぎるか?)本堂の屋根は現在葺き替え工事中でした。わが山寺もトタンを取っ払えばこれとほぼ同じですから、妙に親近感が湧いてきます。「維持管理は大変だろうなー」と、よけいな心配をする私でした。(生意気にも県指定の文化財と勝手に比べておりますが、現実は月とスッポンである。この身の程知らずがーであります)

屋根補修中の明善寺本堂.jpg

白川郷でゆっくり時間を過ごした我々は、その後高山市内のホテルへ向かいました。お宿は「高山で一番のホテルですよ」と、ガイドさんも太鼓判を押す、高山グリーンホテル「天領閣」です。なるほど、おっしゃる通りでありました。ホテルの敷地内には充実した物産館(おみやげ店)もありました。広くて実に豊富な品揃えです。おみやげを選ぶのに目移りして困るほどです。この物産館だけを目当てに団体バスが次々と訪れるのも納得です。こちらのホテル、温泉も実によかったです。いいお湯でしたね。お約束の露天風呂も広くて快適でした。さすがJTBさん。いいホテルを押さえてくれていました。その夜は団体参拝旅行最後の宴会ですから、我々は思い切りアルコールを頂いて大いに盛り上がりました。

高山市内の気になる風景

翌朝は高山祭りの豪華な山車を常時展示している屋台会館をまず見学しました。その後は高山の朝市と古い町並みの散策です。ぶらぶらしていると、軒先に下がる妙なものが目にとまります。酒屋さんが看板がわりに下げている、杉の葉を玉にした「酒ばやし」です。テレビや写真で見たことがありますが、実物を目の前にすると、まるで巨大なタワシみたいです。思わず触ってみたくなりましたが手が届かなかった。残念。

円空仏の千光寺山門.jpg

最後に訪れたのは、円空仏のお寺「袈裟山千光寺」です。円空仏は、ちょっぴり愛嬌のあるその独特の表情から、一度目にしただけでもしっかり印象に残る仏さん(仏像群)です。私も写真やテレビ番組などで知っておりました。しかし、それが沢山展示してある千光寺に関しては、ほとんど知識はありませんでした。千光寺の寺宝館には64体の円空仏が展示してありました。仏さんは有名なのに、なぜかお寺はあまり知られていないように思えます。私が不勉強なのではありますが、初めて訪れて、その理由が少し解ったような気がしました。今回我々は観光バスで訪問しましたが、山の中腹まで登る登山道が実に急傾斜で、しかも狭いのです。だから大型バスが大挙して訪れるのはかなり難しい。あのベテランガイドさんさえ「初めて訪れました」とのことでした。我々は、ヤサカ観光バス運転者さんの超絶テクニックで無事訪問することが出来ましたが、やはり、観光バスで訪れるのは少々難しい場所です。しかし乗用車なら問題ありません。千光寺は個人単位でじっくり訪れるのが望ましい霊場ですね。今回行程に組み込まれていたのは、組寺の舜青寺住職が円空仏にとても詳しくて、その推薦があったからです。おかげで貴重な機会を頂きました。今年の団体参拝旅行の記事はこれで終了です。

この木なんの木?

2011年05月12日

兼六園の灯籠.jpg

本日は前回記事の続編です。永平寺の参拝後に安養寺さんを見送った我々は、次に金沢の兼六園へ移動しました。さすがに日本三名園のひとつです。見事なものでした。ここで一番よく知られている場所といえば、たぶん徽軫(ことじ)灯籠が据えてある池の畔でしょう。写真やテレビでよく目にする代表的な景観ですからね。私は初めて訪れたというのに、なぜか妙に懐かしいような、ほっとするような、少々不思議な感覚でした。「あー、ここ、ここ、お約束の場所だー」とつぶやきながら、思わず一枚パチリでした。園内は桜が満開でした。紅葉の季節の方が写真的には良いのでしょうが、桜の花びらが湖面に浮いているこの時期も、なかなかどうして素晴らしいではないですか。兼六園には毎年11月になると雪吊りが始まる黒松の大木群や花弁の数が異常に多いことで知られる「兼六園の菊桜」など、立派な樹木が沢山あります。しかし、私が一番気になったのは表示も何も無いただの古木でした。

兼六園の気になる木.jpg

その大木はまだ新葉が出始めたばかりでした。芽吹いている個所がずいぶん高い位置なので識別が困難で、もしかしたら紅葉かもと思えたからです。そうだとしたら、めったにお目にかかれない大木です。日立製作所のCMソングで「このー木なんの木、気になる木」って有名なのがありますが、まさにその気分です。場所は金沢医療センターの目の前、兼六坂上交差点のところから園内に入場するとすぐ右手の奥にトイレが有ります。その斜め向かいあたりでした。今なら葉が茂っていて容易に確認できるでしょう。それにしても気になったなー。

住職って24時間体制ですから

2011年05月06日

永平寺法堂.jpg

4月20日から二泊三日で行われた本山参りから帰った翌日、私は組寺の安養寺さんのところへ葬儀のお手伝いに参りました。そのいきさつを今回は書きます。ちょっとした事件でしたからね。

それは団体参拝二日目の朝でした。参拝旅行の観光がスタートする初日です。我々は朝一番で訪れた永平寺の長い回廊を移動中でした。その最中に安養寺住職(若﨑哲英師)の携帯へ緊急連絡が入りました。そう、お葬式です。タイミング悪すぎです。(悪いなんていっちゃダメですよね。)申し訳ありません。でも実際「こりゃ困ったなー」でした。だって我々は福井県の永平寺にいるのですからね。今春私は連チャンで京都から引き返すという奇跡的な(?)巡り合わせに遭遇しましたが、今度は安養寺さんの番(?)であります。さてどうするかですが、住職は迷うことなく王道を選択されました。「すぐ山口まで帰るぞ」です。やはりこれしかないですよね。

永平寺の参拝後は次の目的地である金沢の兼六園へ移動するため、福井インターから高速へ乗ることになっていました。それで、そのインター入口で安養寺住職を「ご法務がんばってください」とお見送りしたのであります。その後、住職はタクシーで福井駅へ向かい山口まで鉄路で帰られました。その日の夕方に枕経のおつとめをされ、翌22日通夜、23日が葬儀でした。永平寺から福井インターへ向かうバスの中で「23日あいてたら葬儀の手伝いたのむわ」とオファーがありました。山寺は暇ですから直ちに了解です。そういうわけで私は参拝旅行から帰った翌日に出向いたのですが、まさか持病(腰痛)が再発して四苦八苦するなんて、その時は知るよしもなかったのであります。前回の記事に書いたとおり白帯グルグル巻きの裏技(?)でなんとかご迷惑を掛けないで済みましたが、まさに冷や汗ものでした。

ところで蛇足ですが、山寺の葬儀は安養寺さんのやり方とほとんど同じです。引導文も住職が使用されているもののパクリです。初めて葬儀のお手伝いに伺った時に、とうとうと述べられる引導のセリフが実に格調高くて感動しました。それですかさずお願いして教えを請いたのです。以来ずっと私は大袈裟な疏(筆書き風の印刷した文書)を毎回用意して、実に恭しく(?)読み上げさせて頂いております。その点、安養寺住職は完全に暗記されていますから事前の準備などまったく不用です。うらやましいったらありゃしません。

根雪が残る永平寺.jpg

さて、絶妙なタイミング(?)で安養寺さんへ葬儀の連絡が入った永平寺は、ごらんの通り雪がしっかり残っていました。「やっぱ、こっちはちがうわねー」であります。4月下旬でこの状態です。山口では考えられないことです。境内に張り巡らされた回廊のありがたさを思い知らされます。これが無かったら冬は移動なんてとても出来ませんからね。こういう風景を目にすると、ぜひ本格的な雪の季節に訪れてみたくなります。一面銀世界の永平寺こそが最も永平寺らしいと思うからです。

それにしても坊さんて因果なお仕事ですね。(また問題発言である)どうしても24時間体制にならざるを得ないのです。いちばん辛いのは、めったなことでは旅行に行けないことかもしれません。そして、そういう時にかぎって緊急事態が発生するのです。

今年もしっかりまきました

2011年05月01日

平成23年大日祭転読修行

4月29日、大日祭り・花祭りが盛会に終了しました。例によって今年もお餅と菓子を派手にバラまきました。大日祭りと花祭りが同時開催となり、締めくくりの一大イベントもすっかりおなじみです。それで、お参りされるみなさんも心得たものです。見れば手に手に大きな袋やカゴをしっかり持参ではありませんか。思わず笑っちゃいそうでした。うーん素晴らしい。実に素晴らしい。見事な心がけであります。ここまで準備万端の姿を目にすると少々プレッシャーでもあります。だって、とっても期待されているのがひしひしと伝わってきますからねー。来年もがんばらないといけませんね。

花祭り勤行

ところで今回の法要ですが、私は事前の準備で大変な思いをしました。この件で少々ボヤかせて下さい。前回の記事でもふれていますが、今年は直前に法然上人800年御遠忌の団体参拝が行われました。その旅行に同行した私は、帰ってくるなり持病の腰痛が再発してひどい目に遭いました(今も痛みます)団体参拝から帰ったら、ただちに大日祭り・花祭りの準備をしなくてはいけません。それなのに自分は腰痛で思うように動けません。たよりの妻は仕事があるのであてになりません。これには弱りました。幸い山寺に法事の予定は入っていませんでしたが、4月9日記事に書いた通り、先月末にお葬式が続いたので、23日と26日に中陰参りの予定が入っていました。それともう二件お仕事があった。

もちまき

ひとつは団体参拝から帰ってきた翌日でした。急遽、組寺のお葬式のお手伝いに行くことになったのです。(この件については、後日詳しく書きます)私は旅行から帰った夜から腰痛が一挙に悪化し、歩くのも辛い状態でした。さあ困りました。いまさら病院へ駆け込む時間はありません。それで白衣を着用する際に使用する博多帯を、コルセット代わりにして何とかしのぎました(今もやってます)私の腰は綿で織られた丈夫な白帯でキリキリと締め上げられました。すると贅肉が帯の上にしっかりはみ出るわけですね。(あー見事に妻と同じ体型である)つくづく「体重を落とさないとまずいなー」と痛感しました。

もうひとつのお仕事は、翌24日(日曜)の役員による境内の清掃作業でした。みなさんが奉仕作業にやってきて下さるのに、住職が腰痛で欠席では申し訳がたちません。それで無理して作業をしたのですが、これが決定的なダメ押しとなりました。翌日は終日床から起き上がることさえ出来ません。29日は目前です。結局、まるで妊婦さんのように白帯をぐるぐる巻き付けて、痛む腰をかばいながら法要の準備をなんとか終えたのは前日の夜遅くでした。「あーホントに疲れたー」です。やはり日頃の行いが悪いのかもしれません。(實空俊德心から懺悔いたします)

今回ひどい目にあったので少々利口になりました。大日祭りでは12箱(600巻)もある大般若経の転読修行を行います。この経箱を移動させて会場の準備をするのですが、重いので腰にこたえます。それで来年のことも考えて今回セッティングした会場をそのまま残す事にしました。よく考えたらそのままでもさして支障はないのであります。

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