こだわり住職のよもやま話

2011年5月6日

住職って24時間体制ですから

2011年05月06日

永平寺法堂.jpg

4月20日から二泊三日で行われた本山参りから帰った翌日、私は組寺の安養寺さんのところへ葬儀のお手伝いに参りました。そのいきさつを今回は書きます。ちょっとした事件でしたからね。

それは団体参拝二日目の朝でした。参拝旅行の観光がスタートする初日です。我々は朝一番で訪れた永平寺の長い回廊を移動中でした。その最中に安養寺住職(若﨑哲英師)の携帯へ緊急連絡が入りました。そう、お葬式です。タイミング悪すぎです。(悪いなんていっちゃダメですよね。)申し訳ありません。でも実際「こりゃ困ったなー」でした。だって我々は福井県の永平寺にいるのですからね。今春私は連チャンで京都から引き返すという奇跡的な(?)巡り合わせに遭遇しましたが、今度は安養寺さんの番(?)であります。さてどうするかですが、住職は迷うことなく王道を選択されました。「すぐ山口まで帰るぞ」です。やはりこれしかないですよね。

永平寺の参拝後は次の目的地である金沢の兼六園へ移動するため、福井インターから高速へ乗ることになっていました。それで、そのインター入口で安養寺住職を「ご法務がんばってください」とお見送りしたのであります。その後、住職はタクシーで福井駅へ向かい山口まで鉄路で帰られました。その日の夕方に枕経のおつとめをされ、翌22日通夜、23日が葬儀でした。永平寺から福井インターへ向かうバスの中で「23日あいてたら葬儀の手伝いたのむわ」とオファーがありました。山寺は暇ですから直ちに了解です。そういうわけで私は参拝旅行から帰った翌日に出向いたのですが、まさか持病(腰痛)が再発して四苦八苦するなんて、その時は知るよしもなかったのであります。前回の記事に書いたとおり白帯グルグル巻きの裏技(?)でなんとかご迷惑を掛けないで済みましたが、まさに冷や汗ものでした。

ところで蛇足ですが、山寺の葬儀は安養寺さんのやり方とほとんど同じです。引導文も住職が使用されているもののパクリです。初めて葬儀のお手伝いに伺った時に、とうとうと述べられる引導のセリフが実に格調高くて感動しました。それですかさずお願いして教えを請いたのです。以来ずっと私は大袈裟な疏(筆書き風の印刷した文書)を毎回用意して、実に恭しく(?)読み上げさせて頂いております。その点、安養寺住職は完全に暗記されていますから事前の準備などまったく不用です。うらやましいったらありゃしません。

根雪が残る永平寺.jpg

さて、絶妙なタイミング(?)で安養寺さんへ葬儀の連絡が入った永平寺は、ごらんの通り雪がしっかり残っていました。「やっぱ、こっちはちがうわねー」であります。4月下旬でこの状態です。山口では考えられないことです。境内に張り巡らされた回廊のありがたさを思い知らされます。これが無かったら冬は移動なんてとても出来ませんからね。こういう風景を目にすると、ぜひ本格的な雪の季節に訪れてみたくなります。一面銀世界の永平寺こそが最も永平寺らしいと思うからです。

それにしても坊さんて因果なお仕事ですね。(また問題発言である)どうしても24時間体制にならざるを得ないのです。いちばん辛いのは、めったなことでは旅行に行けないことかもしれません。そして、そういう時にかぎって緊急事態が発生するのです。

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