こだわり住職のよもやま話

2011年9月

蓮華が間に合いました

2011年09月27日

初開花.jpg

今朝、山寺に出勤すると調整池の片隅に白いものが揺れていました。まさかと思いながらも歩み寄ると、真っ白な蓮華が咲いていました。今年の開花はとうてい無理だと思っていましたから思いがけない吉報です。まるで、お彼岸にあわせて咲いてくれたみたいです。「初物だからさっそく御本尊にお供えしようかな」と思いつつしばらく眺めていましたが、やがてその考えは失せました。開花したのはたった一輪です。他につぼみは見当たりませんから今年はもう咲かないかもしれません。そう思うと刈り取るのは少々かわいそうに思えて来て結局そのままにしました。

思えば昭さんが苗を植えて下さったのは今年の春遅くでした。ここは赤土底の調整池ですから蓮華の成長には適しません。当然成長は遅く、お盆前でもまだ小さな葉がぽつぽつと見られる程度でした。とても今年のうちに開花するとは思えませんでした。それが突然花をつけたのですから不思議というかなんというか。誠にありがたいことです。来年はきっと沢山咲いてくれるでしょうから、仏前に供えるお楽しみはそれまでとっておくことにします。

良いお薬を頂戴しました

2011年09月22日

湯浅与兵衛商店.jpg

先日、高速で京都まで往復しました。夏休みの終わりが近づいてきた息子がアパートへ戻るためです。ついでにいつもお世話になっている法衣店(お坊さんの衣装屋)へ立ち寄りましたので、その時のことを書いてみます。場所は下京区油小路四条南入の角地で、店名は「湯浅与兵衞商店」といいます。いかにも「老舗」って感じの店名ですが、実際こちらには長い歴史があって、いわゆる「本山御用達店」の一つです。私が使っている袈裟や衣などもここで調達しています。ご存じの方もおられるでしょうが、お坊さんの衣装というものは宗派によってバラバラです。それぞれ独自に発展してきた歴史があるので、各宗派の伝統や内部の細かいルールなどに合せなければなりません。ですから自分が所属する宗派組織(本山)と長年密接な関係を築いている御用達店で入手するのが普通です。私の場合はそれが「湯浅与兵衞商店」さんであり、西山の坊さんをやってるかぎりこの関係は続くことになります。

ところで湯浅さんの店頭には「法衣・御袈裟」と、取り扱い商品を掲載した看板があるのですが、(写真にも写っています)でも、ぱっと見では何のお店だかよく解らんように思えます。実にあっさりとした、見ようによっては何とも商売気のない(?)店構えと言えるかもしれません。でもこれで正解なんです。前記の通り、お客さんは基本的に固定客のみ(特定宗派のお寺さん)です。飛び込みの客なんてありえない商売ですからね。(こういうのをいらん心配という)

さて、今年の私は何度も京都を訪れる機会があったのですが、いつも慌ただしくて、結局昨年の春以降はこちらに立ち寄る機会がありませんでした。ひさしぶりに訪れて必要なものを一通り注文した私は、前々から考えていたある勝手なお願いを実行しました。それはここでしか出来ない特別な「目薬」を出して頂くことです。最近ますます老眼がひどくなっていますから、ここいらでとびっきりの良薬を頂戴しようと考えて、図々しくもリクエストをしました。

素晴らしい七条袈裟.jpg

その目薬とは、お葬式の時などに我々が着用する最も重要な衣装(要するに最も高価な衣装)である七条袈裟との対面です。今回拝ませて頂いたのは、そりゃーすごいヤツです。湯浅さんのカタログを見ると、「御寺院様の寺宝袈裟として自信を持って推薦申し上げます」と但し書き(すごいセリフです)がついている七条袈裟です。写真でその雰囲気をお伝えすることなど到底不可能ですが、これぞまさしく最高ランクの逸品です。目の前に出されるとその凄さがよく解ります。銀食器のような渋い光沢感と、しっとりした手触り感が実に印象的でした。超豪華な逸品(値段を聞いたら唖然とします)なのですが、決してこれ見よがしのギラギラ感はありませんでした。しかしその重厚感は見る者を圧倒します。これが本物の質感なんですね。いやー素晴らしい目の保養をさせて頂きました。(手触り感も)まさに見事な良薬でありました。湯浅さん本当にありがとうございました。

ギンナン爆弾炸裂

2011年09月17日

大銀杏のギンナン.jpg

一昨日より大銀杏のギンナンが本格的に落下し始めました。風が吹く度に派手な音をたてています。こうなると本堂前はうっかり歩けません。ギンナン爆弾の直撃を受けかねないからです。運悪く命中でもしたら、そりゃー悲惨です。強烈な臭いが染みついて後が大変です。それでも、毎年わざわざ遠くから拾いにこられる方もおられます。ギンナンといえば、私は茶碗蒸しを真っ先に思い浮かべますが、左党の方には絶好のおつまみらしい。自分はほとんど飲みませんから、よく解らない世界ですが、意外と人気があるようです。山寺の住職にしてみれば、素手で触るとかぶれて大変だし、おまけに強烈な臭い。後片付けが超大変な厄介者です。誰かが拾って行ってくれるなら本当に大助かりです。

大量に落ちてるギンナン.jpg

毎年この季節になると「さあみなさん、じゃんじゃん拾っていって下さいよ」と、スコップと竹ぼうきを目立つ位置に置くようにしています。実際、角スコップでバサバサすくえるほどの量ですからね。

浄土宗のお数珠について

2011年09月14日

山寺の宗派(西山浄土宗)が用いるお数珠には次の五種類があります。①日課数珠②法然数珠③修法数珠④荘厳数珠(道具数珠)そして⑤百万遍数珠です。

日課数珠(女性用と男性用).jpg

日課数珠は浄土宗独特のお念珠で、仏具店等で「浄土宗用の数珠を下さい」と言えば、通常はこれになります。僧俗を問わず常用する数珠であり、最もポピュラーな数珠といえます。菩提寺が浄土宗系の檀信徒さんは、基本的にこの数珠を備えて頂くのが良いでしょう。大きな顆を連にした男性用(男性向き)は通常二十七顆の連と二十顆の連で構成された三万遍数珠です。小さめの顆を連にした女性用(女性向き)は四十顆と二十七顆の蓮で構成される六万遍数珠が一般的です。

法然数珠.jpg

法然数珠は法然上人が常用されていた数珠なのでそう呼ばれています。今日伝わる法然上人の絵姿等を観察すると、必ずこのお数珠を持っておられます。

荘厳数珠と修法数珠.jpg

右側が修法数珠です。修業中や開眼法要(お仏壇やお墓を新調したときに行う法要)などで使用します。左は荘厳数珠(道具数珠)です。こちらは、お葬式などの正装(荘厳衣)の際に使用するお数珠になります。なお写真の荘厳数珠は星月菩提樹の玉で制作されていますが、一般的には水晶玉でつくられることが多いようです。

百万遍数珠くり修行.jpg

百万遍数珠は多人数が車座になって行う百万遍数珠くり用の巨大な数珠です。冒頭で述べたように浄土宗の定番数珠といえば日課数珠ですが以下に補足説明をしておきます。

日課念珠には二十七顆と二十顆の二つの連からなる三万遍数珠と、四十顆と二十七顆の連からなる六万遍数珠があります。いずれも二つの輪が交差してつながっており、他宗派の数珠とは明らかに形状が異なっています。ですから一目で浄土宗用であることが解ります。日課数珠がこんな変わった形状をしているのにはそれなりの理由があります。「お念仏」すなわち「南無阿弥陀仏」を称える際に、その回数を数えるカウンターの役目も併せ持っているからです。要するにソロバンの様な機能を備えたお数珠なんです。法然上人のお弟子さんであった阿波介が考案したといわれています。左手の親指と人差し指で挟んだ顆数が多いほうの連(二十七顆又は四十顆)を、一声称えるごとに内側へくるのです。そうやって一周(二十七又は四十)回したら、人差し指と中指の間に挟んだもう一つの連の顆(二十顆又は二十七顆)を、一つ手前にくります。この操作を繰り返して顆の少ない方の連が一周(27×20=540回又は40×27=1,080回)すれば、金属のカンにぶら下がる十顆の弟子珠(この顆はソロバンの玉様になっている)を一粒移動させます。十顆の弟子珠がすべて移動すると5,400回又は10,800回称えたことになります。ここまで来たら金属のカンにぶらさがるもう一つの弟子珠(こちらは六顆で通常の丸形)を一つ移動させます。以上の手順を繰り返して六顆の弟子珠を全てくり終われば(この間に十顆の弟子珠は三往復する)称えたお念仏は32,400回又は64,800回となります。慣れればこの操作は手元を見なくても可能です。よって多少誤差があったとしても、日課三万遍又は六万遍を念じた(南無阿弥陀仏を称えた)ことになります。どうですうまく出来ているでしょう。なお、二つの連のうち顆の数が少ないほうの連は、顆と顆の間に小珠(念仏の際に顆としてカウントしない)が入っており、金属製のカンと弟子珠がぶら下がっています。

日課数珠を繰る

さて、山寺の住職がうんちくを披露しておりますが 実のところ本人は日課念仏をきっちり称えた実績(要するに一日に三万遍)がありません。実に説得力に欠ける解説で申し訳ありません。でも一挙に三万遍のお念仏はなかなかできることではないですからね。

台風12号のおきみやげ

2011年09月05日

台風12号の置きみやげ.jpg

12号は各地で災害を引き起こし、多くの尊い命を奪いました。亡くなられた方々のご冥福を、心からお祈り申し上げます。自然の猛威に対して、我々人間の力がいかにちっぽけなものかを思い知らされる数日間でした。山寺は台風の進路からかなり離れていたので、大きな被害はありませんでした。一番心配した雨は大したことなかった。やれやれです。しかし大日堂広場の周囲に並ぶのぼり旗の多くは強風でポールがへし折れたり、ボロボロに引きちぎれたりと、随分悲惨な状態になりました。境内は散乱した楠やサクラ等の枝葉でぐちゃぐちゃです。ご覧の通り大銀杏の周囲には台風12号のおきみあげが沢山落ちていました。

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