浄土宗のお数珠について
2011年09月14日
山寺の宗派(西山浄土宗)が用いるお数珠には次の五種類があります。①日課数珠②法然数珠③修法数珠④荘厳数珠(道具数珠)そして⑤百万遍数珠です。
日課数珠は浄土宗独特のお念珠で、仏具店等で「浄土宗用の数珠を下さい」と言えば、通常はこれになります。僧俗を問わず常用する数珠であり、最もポピュラーな数珠といえます。菩提寺が浄土宗系の檀信徒さんは、基本的にこの数珠を備えて頂くのが良いでしょう。大きな顆を連にした男性用(男性向き)は通常二十七顆の連と二十顆の連で構成された三万遍数珠です。小さめの顆を連にした女性用(女性向き)は四十顆と二十七顆の蓮で構成される六万遍数珠が一般的です。
法然数珠は法然上人が常用されていた数珠なのでそう呼ばれています。今日伝わる法然上人の絵姿等を観察すると、必ずこのお数珠を持っておられます。
右側が修法数珠です。修業中や開眼法要(お仏壇やお墓を新調したときに行う法要)などで使用します。左は荘厳数珠(道具数珠)です。こちらは、お葬式などの正装(荘厳衣)の際に使用するお数珠になります。なお写真の荘厳数珠は星月菩提樹の玉で制作されていますが、一般的には水晶玉でつくられることが多いようです。
百万遍数珠は多人数が車座になって行う百万遍数珠くり用の巨大な数珠です。冒頭で述べたように浄土宗の定番数珠といえば日課数珠ですが以下に補足説明をしておきます。
日課念珠には二十七顆と二十顆の二つの連からなる三万遍数珠と、四十顆と二十七顆の連からなる六万遍数珠があります。いずれも二つの輪が交差してつながっており、他宗派の数珠とは明らかに形状が異なっています。ですから一目で浄土宗用であることが解ります。日課数珠がこんな変わった形状をしているのにはそれなりの理由があります。「お念仏」すなわち「南無阿弥陀仏」を称える際に、その回数を数えるカウンターの役目も併せ持っているからです。要するにソロバンの様な機能を備えたお数珠なんです。法然上人のお弟子さんであった阿波介が考案したといわれています。左手の親指と人差し指で挟んだ顆数が多いほうの連(二十七顆又は四十顆)を、一声称えるごとに内側へくるのです。そうやって一周(二十七又は四十)回したら、人差し指と中指の間に挟んだもう一つの連の顆(二十顆又は二十七顆)を、一つ手前にくります。この操作を繰り返して顆の少ない方の連が一周(27×20=540回又は40×27=1,080回)すれば、金属のカンにぶら下がる十顆の弟子珠(この顆はソロバンの玉様になっている)を一粒移動させます。十顆の弟子珠がすべて移動すると5,400回又は10,800回称えたことになります。ここまで来たら金属のカンにぶらさがるもう一つの弟子珠(こちらは六顆で通常の丸形)を一つ移動させます。以上の手順を繰り返して六顆の弟子珠を全てくり終われば(この間に十顆の弟子珠は三往復する)称えたお念仏は32,400回又は64,800回となります。慣れればこの操作は手元を見なくても可能です。よって多少誤差があったとしても、日課三万遍又は六万遍を念じた(南無阿弥陀仏を称えた)ことになります。どうですうまく出来ているでしょう。なお、二つの連のうち顆の数が少ないほうの連は、顆と顆の間に小珠(念仏の際に顆としてカウントしない)が入っており、金属製のカンと弟子珠がぶら下がっています。
さて、山寺の住職がうんちくを披露しておりますが 実のところ本人は日課念仏をきっちり称えた実績(要するに一日に三万遍)がありません。実に説得力に欠ける解説で申し訳ありません。でも一挙に三万遍のお念仏はなかなかできることではないですからね。