こだわり住職のよもやま話

2011年9月22日

良いお薬を頂戴しました

2011年09月22日

湯浅与兵衛商店.jpg

先日、高速で京都まで往復しました。夏休みの終わりが近づいてきた息子がアパートへ戻るためです。ついでにいつもお世話になっている法衣店(お坊さんの衣装屋)へ立ち寄りましたので、その時のことを書いてみます。場所は下京区油小路四条南入の角地で、店名は「湯浅与兵衞商店」といいます。いかにも「老舗」って感じの店名ですが、実際こちらには長い歴史があって、いわゆる「本山御用達店」の一つです。私が使っている袈裟や衣などもここで調達しています。ご存じの方もおられるでしょうが、お坊さんの衣装というものは宗派によってバラバラです。それぞれ独自に発展してきた歴史があるので、各宗派の伝統や内部の細かいルールなどに合せなければなりません。ですから自分が所属する宗派組織(本山)と長年密接な関係を築いている御用達店で入手するのが普通です。私の場合はそれが「湯浅与兵衞商店」さんであり、西山の坊さんをやってるかぎりこの関係は続くことになります。

ところで湯浅さんの店頭には「法衣・御袈裟」と、取り扱い商品を掲載した看板があるのですが、(写真にも写っています)でも、ぱっと見では何のお店だかよく解らんように思えます。実にあっさりとした、見ようによっては何とも商売気のない(?)店構えと言えるかもしれません。でもこれで正解なんです。前記の通り、お客さんは基本的に固定客のみ(特定宗派のお寺さん)です。飛び込みの客なんてありえない商売ですからね。(こういうのをいらん心配という)

さて、今年の私は何度も京都を訪れる機会があったのですが、いつも慌ただしくて、結局昨年の春以降はこちらに立ち寄る機会がありませんでした。ひさしぶりに訪れて必要なものを一通り注文した私は、前々から考えていたある勝手なお願いを実行しました。それはここでしか出来ない特別な「目薬」を出して頂くことです。最近ますます老眼がひどくなっていますから、ここいらでとびっきりの良薬を頂戴しようと考えて、図々しくもリクエストをしました。

素晴らしい七条袈裟.jpg

その目薬とは、お葬式の時などに我々が着用する最も重要な衣装(要するに最も高価な衣装)である七条袈裟との対面です。今回拝ませて頂いたのは、そりゃーすごいヤツです。湯浅さんのカタログを見ると、「御寺院様の寺宝袈裟として自信を持って推薦申し上げます」と但し書き(すごいセリフです)がついている七条袈裟です。写真でその雰囲気をお伝えすることなど到底不可能ですが、これぞまさしく最高ランクの逸品です。目の前に出されるとその凄さがよく解ります。銀食器のような渋い光沢感と、しっとりした手触り感が実に印象的でした。超豪華な逸品(値段を聞いたら唖然とします)なのですが、決してこれ見よがしのギラギラ感はありませんでした。しかしその重厚感は見る者を圧倒します。これが本物の質感なんですね。いやー素晴らしい目の保養をさせて頂きました。(手触り感も)まさに見事な良薬でありました。湯浅さん本当にありがとうございました。

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