こだわり住職のよもやま話

藤井家の荘厳

2010年02月18日

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現在責任総代のお一人、藤井 昭さんのお宅で昨年秋におばあちゃんの17回忌法要を務めさせて頂きました。その法要を行うにあたり、きく代さん(奥さん)から事前に「これに間に合うようにお仏壇を新調しようかと思うのだけど」と相談がありました。仏壇屋さんが聞いたら喜んで飛んでくるような話です。でも藤井家のお仏壇はまだそんなに古いわけでもないし特に傷んでもいません。唐木ですから大きな傷でもつけない限り全然問題ありません。「もったいないから仏壇本体の更新ではなく、仏具や荘厳(飾り付け)の更新や追加をすればいいんじゃないですか?」とお答えしました。そもそも「仏壇を更新しようかな」と言われているのですから、それなりの予算は考えておられるはずです。「仏具を良いものに更新されれば藤井家末代の物になりますよ」とお勧めしました。藤井家のお仏壇はおばあちゃんの代に仏壇本体が更新されているようです。仏具は仏壇を購入した時に更新される事が多いのですが、藤井家では本体だけが更新されているようで、少々不都合がありました。それで、具足(香炉・燭台・花瓶など)と読経に使用する道具(鐘・木魚など)の更新を優先して頂いたのです。仏壇内部をより華やかに荘厳するために、気の利いた瓔珞(仏壇の内部にぶら下げる飾り)と常華(金塗りの蓮華)を追加し、宗紋が刺繍された打敷(仏壇内部に掛ける金襴の敷物)も追加することにしました。経机は少々傷んでいましたのでこの際気の利いたものに更新することにしました。仏壇本体は悪い物じゃないのですから、こうすれば実に立派な荘厳です。

さっそく住谷仏壇の千々松さんに、「絶対に仏壇本体を勧めたらあきませんよ」と重々念押し(営業妨害かも?)した上で、私が独断と偏見で勝手に選んだ(自分が払うわけじゃないから遠慮しなかった)商品を携えて藤井家を訪問してもらいました。私がおすすめした具足は立派なものです。これなら末代まで使えるでしょう。こういう良いものなら年月がたてばますます風格が出るというものです。古くなって表面が傷んでも塗り替えれば良いのです。それだけの値打ちがあるのですから。読経用の鳴り物も私の方針(?)で、鐘(リン)を本格的なものにしてもらいました。お寺の大きな鐘(キンス)と同じ様式です。一般家庭用としてはかなり大き目です。正式な台に乗っかっていますので、叩きやすく実にいい音で鳴ります。ただし、正直なところじゃまになるとは思います。しかし、こういうしっかりした鐘(ほんとどキンスと呼べるしろもの)が仏壇の前に置かれていると、訪れた人はそれを目にしただけでその家の仏様への姿勢に敬意を表することになるでしょう。豪華な仏壇(それ自体は悪いことではないのですが)よりも、こんな所にこだわった荘厳のお仏壇が私は好きなのです。以前(12/7見栄の仏壇と篤信の仏壇)という話を書きましたが、まさにその方針で荘厳して頂くことをお勧めしました。ありがたいことに、藤井家では私が選んだ物をそのまま購入して下さいました。おかげさまで、年回忌法要の際には実に気持ちよく歌わせて(礼賛偈)頂きました。ありがとうございました。

ご当主の昭さんはとても温厚な人です。一方奥さんは明るくてチャキチャキな方ですから、実にうまいことバランスの取れているご夫婦です。藤井家の荘厳が更新されてしばらくすると、きく代さんが「方丈さん聞いてくれる?主人が時々この鐘を叩いて拝むようになったのよ、おかしいでしょう?以前はそんなこと全然なかったのにねー」なんて、笑いながら話して下さいました。「しめしめ思惑通り」であります。とにかく仏壇を豪華なものに変えれば良いってものではありません。しかしある程度こだわるのも悪くないと思います。人は具足や仏具だけでも、それなりのものにすれば気になり出して大切にするようになりますからね。まして全体の調和も考えて過不足なくきっちり荘厳されたお仏壇は、眺めているだけでもとても気持ちのいいものです。結局それが先祖や仏を大事にすることに繋がります。仏壇屋にとっては仏壇本体が売れた方が金額が張るので嬉しいとは思いますが、こういうのが賢いお金の使い方だと思います。揃っている家は限られる、ふせ鐘(ショウゴ)もこの機会に購入して下さったので、これで檀家さんの仏壇としては完璧です。私は今後こちらで法要を行う際には、仏具をあれこれ持参しなくて済みます。あー実にありがたい。「南無きく代菩薩様」であります。(決定権は奥さんが握っているお宅ですから、その奥さんが一番ありがたいのである。昭さんすみません)

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