こだわり住職のよもやま話

小山家愛犬まりん転生安楽国

2013年11月22日

生類供養塔.jpg

一昨日、釣友の小山氏が家族一同(四人と一匹)で山寺へやってきました。 実は小山家の愛犬が死去したので、供養の為に私を訪ねてくれたのです。ワンちゃんの名は「まりん」でした。なるほど、いかにも釣りキチの小山氏が可愛がっていた愛犬らしい名です。その子は棺代わりの箱の中で沢山の花につつまれていました。白い毛並みにピンクのリボンがよく似合っていて、まさにぬいぐるみの様な綺麗なワンちゃんでした。

到着した小山氏は、私の前ではいつものように陽気に振る舞っていました。しかし、きっと随分落ち込んだはずです。ましてや、彼の奥さんはさぞかし涙を流されたことでしょう。私は開口一番「(こんな遠くまで)よく(まりんちゃんを)連れてきて下さいました」と、ご家族の前で申し上げていました。事実、北九州からこんな田舎まで高速で来てくれたのです。きっちり供養して差し上げねばなりません。今回偶然にも息子が帰省していたので立ち会わせることが出来ました。彼はすでに葬儀を何度か経験していますが、ワンちゃんのケースは初めてになります。江戸期から牛馬等の生類供養を行って来たこの寺の歴史を認識させ、それを実践する貴重な機会に恵まれたのです。ありがたいことです。

まりんの供養は、まず大日如来の御宝前で読経一式とご家族による焼香をして頂きました。その後、古式にのっとり山寺の墓地の一画に設けた動物専用の場所へ移動して埋葬しました。いわゆる土葬です。その際に重要なのは、ご家族の手で土をかぶせて頂くことです。あえて申せば、お葬式は別れの儀式であり残った者が悲しみをこらえて心の始末をつける儀式です。ですから、最後の工程はぜひとも残った者達が自らの手で実行して頂きたいのです。そうすることが、死を受け入れ心のけじめをつけることになるのですから。

まりんのお墓は、しばらくは埋葬した場所にある土まんじゅうになります。しかし、いずれは土中の遺骨を回収して山寺の生類供養塔に改葬することになります。そして、それ以降は、こちらの供養塔が、まりんの正式なお墓になります。長らく日本人はこういう方法(土葬)で故人とのお別れと墓石建立をしてきました。江戸期の一般庶民の個人墓はたいていそうです。古い墓地を観察すれば、それは察しがつきます。所狭しと並ぶ個々の墓石の下に、それぞれの棺桶を埋葬する大きな穴を掘れたはずはないのですから。故人の亡骸は別の箇所に一度埋葬し、後にあらためて墓石を建立していったのです。ですから、古い時代の墓石の下から、まるまる全身のお骨が出て来るなんてことは通常ありません。

それにしても、こういうやり方の供養は田舎の山寺だからこそ可能なことです。すでにお骨の状態であれば、直ちに生類供養塔へ納骨することが出来ます。一般的にはそれが普通ですし一挙に決着がつきます。それはそれで悪いことではありません。しかし、古式にのっとった今回のようなやり方も、これはこれで捨てがたいものがあります。かなり面倒なのは事実ですが、一度きりのことですから、施主に賛同して頂けるならなるべく丁寧に葬ってあげたいものです。いずれ改葬の際には、小山氏と二人でスコップを片手に彼女を供養塔へ移してあげることになるでしょう。

平成25年11月18日寂 小山家愛犬 俗名まりんの冥福を祈ります。

▲PAGETOP