こだわり住職のよもやま話

日本人の美徳はどこへ

2013年11月06日

吾唯知足のつくばい.jpg

 

メニューの不当表示に関する最近の報道を見ていると、ついついぼやきたくなります。有名ホテルチェーンのレストランでのメニュー表示問題を皮切りに、とうとう日本有数の老舗百貨店でも同様の嘘が発覚しました。「いいかげんにせいよ」って言いたくなります。そしてなんだかとても哀しくもなりました。思えば東日本大震災の際に日本人の誠実さは海外から高く称賛されたものです。もし諸外国で同じことが起きたなら、助け合いどころかたちまち略奪の横行で手の付けられない状態になっていても不思議ではないのに....と。日本人は驚くほど忍耐強く冷静であり、そして他人を思いやる優しさで醜い争いなど起こさなかった....等と、海外の記者がさかんに伝えていたことはまだ記憶に新しいところです。この他人を思いやる心や誠実さこそ日本人の美徳でした。なのに、このていたらくです。生まれてこのかた全く嘘をついたことが無い人なんていないでしょうが、だけど今回の報道を見ていると心中穏やかではいられません。

本来日本人は人を欺く嘘を平気でつく国民ではありません。そんな誇るべき国民性から生まれるメイドインジャパンは、今でも世界で最も信頼されるブランドのはずです。なのに次々と出てくるのは、どうも個人の問題というよりも組織のありかたに原因があるように思えてなりません。謝罪会見に出てくる責任者らしき人々は一様に「これは偽装ではなく誤表示である」とか「管理ミスであり故意ではない」などと言い訳がましいことに終始します。「申し訳ありません。我々は嘘をついてました」とは絶対に言わない。いや、言えないのである。おそらく、当の本人も内心では嘘をついていて申し訳ないと思っているに違いありません。だけど、それを許さないのが組織のおきてです。人は組織(企業)に属しちゃうと「悪いのは俺じゃない。組織の繁栄のためにそうせざるおえなかったんだ....」と考えるようになる生き物なんです。

消費者も冷静になる必要があるかもしません。一連の偽装表示がまかり通ったのは、我々が高級(高額)な材料の使用→価値が高い(美味しい)と、無条件に信じて不当な対価を気前よく支払ったからです。豊になった我々日本人の安易なブランド指向がこういう事態を招いているのでしょう。人を疑えとはいいませんが、結局は自分の責任で対価に見合うだけの価値があるか否かを冷静に見極める必要があるのです。実に難しい判断が常に求められる世になりました。まったくもって大変な時代です。

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