こだわり住職のよもやま話

今年はお墓が建たない?

2012年01月15日

江戸期閏月の過去帳.jpg

今年は閏年なので墓石店の売り上げが落ち込むかもしれません。それというのも、当地方でば「閏年の墓石建立は避けたほうが良い」という考え方があるからです。どうやら、九州や西日本地区でいわれているようなのですが、そもそも仏教の教えに、そんな考え方は全くありません。面白いのは、逆に閏年こそ墓石店が忙しくなる地方もあるそうで、少々不思議な慣習です。これまで大して気にしていませんでしたが、考えて見れば、この「閏年にどうのこうの」という、いわば摩訶不思議な迷信について、私自身もきちんと説明することが出来ません。それで調べてみたら次のようなことが解って来ました。

要約すると次のようになります。わが国では長く太陰太陽暦(旧暦)が使用されていたので、太陽の動きとの誤差を調整するため、1年が13ケ月になる年が時々ありました。旧暦の一年は354日、閏月のある年は384日と、年によってまちまちでした。それで、季節の移り変わりと大きな食い違いが出ないようにと、何年かに一回閏月を入れて一年13ヶ月にして調整していたのです。ところで、江戸時代の武士などの給金は、基本的に年俸制でした。ですから、閏年になると1ヶ月余分にやりくりしなければなりません。現実問題として平年よりも節約しないとやっていけない訳です。それで閏年に節約の習慣が生まれます。「閏年は仏壇の新調をさけるように」などというおふれを、藩主が出すところもあったそうです。この制約は、やがて本来の意味が忘れられて形式だけが残ってゆきました。そして、「閏年に墓や仏壇を新調すると悪いことが起こる」などと、意味を取り違えて伝えらるようになったらしいのです。前記の通り、主に九州や西日本で、そういう考え方が広まったらしいのですが、一方、閏年に縁起が良いと考える地方は、閏年を「うるおう年」と解釈するのだといいます。

ふーん、なるほど。おもしろい話しですね。日本人は縁起かつぎが好きですから、そうなっちゃうんでしょうね。旧暦の時代だと、本当にまるまる1ケ月余分にやりくりしなければいけなかったのですから、どこかの藩主が出したらしい「おふれ」にも大いに意味がありました。でも、今日、閏年は2月が1日増えるだけですから意味のないことですよね。ちょっと利口になりました。まれに「閏年にお墓を建てたらいけないの?」と聞かれることがありますが、気にする必要のない迷信であることを、今後はきちんと説明してあげられそうです。

蛇足ですが、光明寺の過去帳をパラパラめくると、閏月に亡くなった方の記載が結構あることに気づきます。新たな発見でした。

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