こだわり住職のよもやま話

今年で見納めです

2011年11月04日

平成23年11月4日の山寺.jpg

本堂前の大銀杏がいよいよ色づき始めました。私が一番好きな季節の到来です。毎年限られた期間だけですが、鮮やかな黄色と少々赤茶けて古びた本堂の大屋根、そして燃え始めたモミジの組み合わせが、結構絵になる景観を見せてくれます。平生は訪れる人も限られる実に静かな田舎寺ですが、来週あたりからは、カメラを片手にこの山寺を訪れる人々の姿を目にすることになるでしょう。

ところで、この本堂は来年のお盆明けから建て替え工事に入る予定になっています。ですから、この景観はいわば今年が見納めとなります。「最後の秋なんだから、ちゃんと記録に残しておかなくちゃ」と思う今日この頃です。

現在の本堂が建てられたのは約240年前の傳空順阿上人祖吟大和尚の代です。驚くことに、ほぼ建築当時の姿で今日を迎えています。障子と雨戸だった外周はさすがにガラス戸となり、茅葺きの屋根にはトタンが覆われていますが、それ以外は昔のまんまです。国宝や重要文化財でしたら、それなりに補修を続けて維持管理をしますから納得です。しかし、調べて見るとこの寺は補修がほとんど行われておらず、純粋に240年前の構造物でした。日本建築の耐久性には改めて驚かされます。普通ならとっくの昔に建て替えられている建物でしょう。田舎の小寺でここまで古い状態で残っているのは珍しいと思います。境内に残る石垣や大日堂広場へ登る石段、そして古い灯籠など、今残っている主要な遺物も軒並み傳空さんの時代に整備されたものです。何の因果か私の代で建て替えることになりました。嬉しいような哀しいような実に複雑な心境です(失言ですね)。それというのも、多くの人々はこの山寺を訪れると必ずこう言われます。「この建物を後代に残したいものですね」であります。確かにおっしゃる通りです。見方によっては貴重な建物です。私も出来ることならそうしたかった。国宝級の建物で行われるような、大がかりな解体修理を行えばそれも可能でしょう。しかしそれにはとてつもない資金が必要です。理想と現実には大きなギャップがありました。それでも、すでに限界に近い本堂の建て替えがなんとか実現する運びとなったことには、素直に喜びたいと思います。新しい本堂はずいぶん質素な建物にはなりますが、近年存亡の危機さえあったことを思えば誠にありがたいことです。光明寺を次の世代に残すことが出来るのですから。 

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