○仏教の説く此岸(しがん)と彼岸(ひがん)の世界
仏教では、人が幸せになるには「此岸から彼岸へ渡れ」と説きます。この此岸と彼岸の世界は、つぎのように説かれています。自分の前に大きな川が流れている様子を想像してください。自分がいるほうを此岸と呼び、対岸を彼岸と呼びます。此岸は私たちが生きている世界、凡夫の世界です。煩悩にあふれた世界で、これを娑婆世界とも呼びます。これに対して、対岸の彼岸は仏の世界です。煩悩の炎がすっかり消えた涅槃の世界です。お釈迦さまは「此岸では人は真の幸せにはなれないので、彼岸へ渡りなさい」と説きました。これが仏教における基本テーマです。
○彼岸への渡りかたには2つの考え方がある。
仏教はその根本的な思想の違いによって「上座部仏教」と「大乗仏教」に大別されます。東南アジアで現在も繁栄しているのが「上座部仏教」であり、これに対して日本に定着した仏教は「大乗仏教」です。さて、ここで問題になるのが、それぞれの彼岸へ渡る方法です。上座部においては、川を渡って彼岸へたどり着けるのは出家僧として厳しい修行を積んだごくわずかな人々に限られます。これに対して、すべての人が渡れるようにその方法を説いたのが「大乗仏教」です。この両者の思想的な違いはとても重要なことです。ですから仏教の理解を進めるにあたっては常に意識しておく必要があります。