こだわり住職のよもやま話

本山カレーは星ふたつ?

2010年01月13日

本山のタイムスケジュール.jpg

宗門の僧侶になるための行(加行)では、食事の当番になると本山の回廊を必死で走り抜け、時間との競争でした。その食事には、たまにカレーライスの日があり、自分の食事当番と重なるとちょっと嬉しかった。使用する食器の数が少なくなるので、準備も後片付けも通常より少々楽になるからです。実はカレーライスと聞いた時「坊さん修行には似つかわしくないのでは?」と思った。だってスプーンで食べるものですよ。どう考えても日本的な食べ物ではないでしょう?でもよく考えてみたらルーツはインドの代表的な料理です。お釈迦さんの生まれた国の食べ物です。それとカレーの原料になっている香辛料は強壮剤みたいなものですから、疲れ切った心身の回復には効果的です。通常我々がカレーと称して食しているものは、インドの本場もんとは相当違う食べ物ではありますが、そういう考え方をすれば日本の修行僧が食べていても少しも変でありません。おまけに素早く食べられるので、食事中の正座から早く解放されてありがたい。だから加行人には大歓迎の献立でした。

そんなみんなが喜ぶ本山カレーですが、このカレーには娑婆のカレーとは決定的に違うところがありました。ヒントは仏道修行中の現場で食する特殊性です。察しの良い方はすぐに気づかれたと思いますが、そうです肉が入っていません。どうなってるかというと、肉の代わりにきつねが好物にしているらしい(?)油あげがたっぷり入っています。これが娑婆ではまずお目にかかれない本山特製の精進カレー、別名コンコンカレー(私が勝手に命名)です。初めて見たときは少々驚いた。「えーつ」とみんな思ったはずです。話を聞いただけで「まずそー」と思った者もいたでしょう。しかし修行中の者がそんなわがままなことを口にしてはなりません。出されたものは残さず頂くのがルールです。それでしぶしぶ口に運びました。ところが食べてみると目から鱗がポロリ。1枚じゃ足らず2~3枚は落ちるのです。「あれっ?まずくない」「けっこういけてるかも?」「いや、これはかなり美味いんじゃないか?」と、評価はすぐに変りました。そして「すみません、おかわりお願いします」になったのです。本山でB級グルメが味わえるとは思いませんでした。今でもあの香りを思い出すと「もう一度食べたいなー」と思ってしまいます。グルメガイドには絶対に載らない、選ばれた(?)者にしか口にすることが出来ない幻のカレーです。B級として採点するなら「星ふたつ」くらいは楽勝の本山カレーでした。

▲PAGETOP