こだわり住職のよもやま話

小さなお葬式について

2015年12月23日

本堂での親族葬

先日、本堂で小さなお葬式をしました。ただし、小さかったのは参列者数(故人の親族のみ)だけで、私自身も納得のいく実に素晴らしいお葬式でした。そういう訳で本日は小さなお葬式について書いてみます。

ここ数年「小さなお葬式」だとか「家族葬」などという言葉を見聞きすることが多くなりました。山寺の檀家さんも時々この家族葬という言葉を口にされることがあります。しかし、小さなお葬式は解りますが、家族葬という言葉には人それぞれ抱いているイメージが違うようなので、そのあたりを整理しておく必要があると常々感じています。家族葬は従来からあった密葬とほぼ同様の形態で行うことになります。ただし、密葬の場合は後日改めて告別式やお別れの会等を行うことを前提にしていますから、それが無いのが家族葬に相当するようです。そして、参列者がほぼ故人の家族に限定されるから「家族葬」なんだと私は解釈しています。

山寺でもごく内輪での小さな葬儀を行うことがあります。具体的には多くても30名弱が参列するお葬式です。出棺の際には出席者ほぼ全員が火葬場へ同行する(親族だから)ことになります。いわば故人の親族のみによるお葬式です。こういうケースを家族葬と呼ぶのは適当ではないと思うので、私は個人的に「親族葬」と呼んで区別しています。田舎街でも徐々にそういう葬儀が増えてきています。是非もありません。今後も確実に増えていくのは間違いありません。

小さなお葬式が多くなってきたのは、一つには人間関係の希薄化が進んだからでしょう。ご近所や所属組織での冠婚葬祭のお付き合いが、どんどん消滅してきているのですから当然の成り行きでしょう。高齢化のせいもあるでしょう。しかしこれ以外にも、切実な理由として経済的な負担に対する人々の潜在的なニーズの高まりも大きいのではないでしょうか。たしかに、従来の伝統的なお葬式はずいぶんとお金がかかります。お年寄りが「自分の葬式代くらいは残しとかんといかん・・・」などと、真剣に心配しなければならない時代です。そして、戦後、核家族化が急速に進み子供の数が激減したこの国では、親の葬儀を出す子供世代の負担は増すばかりです。一組の夫婦が互いの親の葬儀を出すことになる時代です。この現実を踏まえると、経済的な負担を少しでも軽くしたいと考えるのは当然でしょう。

山寺でも本堂が新しくなって以降は、お葬式を寺で行うことが多くなりつつあります。常日頃から堂内はイス席で法要を開催しています。ですから葬儀会館と同等の楽ちんな(正座しなくて良い)お葬式が可能です。そして山寺でお葬式を行うと、高額になる祭壇費用を節約できるという大きなメリットが発生します。本堂にはすでに立派な荘厳があるのですから「わざわざ高価な祭壇を仕立てる必要は無いでしょう」と、私は考えています。本来、我が宗派の伝統的なルールでは、本堂でも外陣に祭壇を仕立てることになっています。だから私のやっていることは御法度かもしれませんが、それでは費用を削減することは出来ませんからここは譲れません。故人の棺を導師席の前に設置し、生花をその左右に一対供えればすでに立派な会場になります。ましてや、親族から複数の生花が供えられた先日の葬儀などは、写真の通り見事な会場となりました。そもそも、どう考えても葬儀屋さんが仕立てる祭壇より、本堂荘厳の方が立派(額が違うので当然である)です。だったら、それをフル活用するべきでしょう。葬儀屋さんには申し訳ないのですが、このやり方だと葬儀費用が随分節約出来てしまいます。

それと、これは個人的なこだわりですが、読経に使用するお道具が全て本堂に設置してある本式なモノとなるのも大きいのです。会館に備え付けのお道具とはひと味違います。特に鳴り物の音色の違いは決定的で、間違い無くお経はワンランクアップします。

山寺本堂での小さなお葬式

さて、本日は本堂でのお葬式のメリットをご紹介して葬儀屋さんの営業妨害みたいな事を書きましたが、一般的な葬儀会館での葬儀にも良いところは沢山ありますので触れておきます。会館での葬儀の良さとは、なんと言っても行き届いたサービスを受けられるということです。有り体に申せば、とっても楽ちんだということです。かつて田舎では葬式を出す(基本的に自宅葬)となると、ご近所の人達の協力なしには不可能でした。それが今では葬儀屋さんに任せておけば、滞りなく執り行うことができる様になりました。ましてや、会館葬となればさらに楽になりました。山寺がある田舎街でも会館葬が普通になったのですが、その際には遠方から帰ってくる親族の宿泊場所が確保出来るということが大きなメリットになります。これはかなり重要なことです。ですから私は遠くから親族が帰ってくるのならば「宿泊場所の確保も兼ねて会館を利用されるのが正解でしょうね」と申し上げています。

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