こだわり住職のよもやま話

タケ子さん宅の法事

2010年05月13日

病室.jpg

先日、藤井タケ子さん宅で法事がありました。タケ子さんはご主人が昭和57年に亡くなられて以降、一人で生活をされていました。昨年体調を崩されたのを機に、近くにおられる子供さんの所に身を寄せられるようになっていたのですが、最近転倒による骨折で入院をされています。それで今回はタケ子さんが長年住み慣れた自宅に、息子さん夫婦と娘さんが集まられて年回忌法要を行いました。お会いしたかったのですが残念でした。タケ子さんは89才になられると聞きました。数年前から少々視力が低下されているので、顔をのぞかせてもすぐには誰だか解りにくくなっていました。それで訪問した際には大きな声で「光明寺の坊主が来ました」と声を掛けていました。そんなタケ子さんですが、老いたとはいえ頭の回転はとても速い方です。大変失礼ながら「このおばあちゃんはただ者ではないなー」と痛感させられた経験があります。

それは6年前のことです。お盆のおつとめで訪れた時の事が今も印象に残っています。タケ子さんのお宅には毎年お盆前の決まった日の午後に訪問しますが、いつも軽い食事を用意して待っていて下さいました。そうめんやスイカなどを頂いて、こちらで少々油を売るのが恒例です。いろいろお話しをすることになるのですが、その際の話題が政治や経済の話にも及ぶのでびっくりでした。例えば「今朝の新聞の○○の記事について方丈さんはどう思うかね?」だとか、昨夜のニュースについて「私はこう思うけど方丈さんの見解は?」なんて、80才を超えてるタケ子さんから次々に飛び出しました。「偏見だぞー」って叱られるかもしれませんが、当地は田舎ですからめずらしく感じますよね。その後も毎度のように政治や経済問題について意見を交わしたり、新聞やテレビなどで今話題になっているテーマについて、あれこれ会話をすることになりました。最新の話題がどんどん出てくるということは、毎日隅々まで新聞を読みニュース番組も常にチェックしておられるという事です。雑誌や話題の本などもよく読まれているから、ホットな話題で盛り上がることになります。私が知らない最新情報を教えて頂くこともありました。話していると実に年齢を感じさせない方です。それで「このお年寄りはただ者じゃないぞー」と思ったのです。

後から知ったことですが、タケ子さんは職業婦人でした。今では看護師と呼びますが、現役時代は看護婦さんだったのです。要するにバリバリのキャリア・ウーマンだった訳です。厳しい医療の現場でがんばって来られた気丈な方だからこそ、この年齢になられても自立した生き方を実践することが出来たのでしょうね。タケ子さんの経歴を知って「なるほどなー、強い女性なんだー」と改めて納得したものです。まったくもってすごいお年寄りです。

今回はかないませんでしたが、次の機会にはぜひ元気なお姿を拝見したいものです。気にかけて下さっていた本堂建て替えの件も、今年中には正式に計画が固まって動き出すでしょう。我々に時間が限られているのは否定できない事実ですが、新しい本堂をぜひ見て頂きたいのであります。

▲PAGETOP