こだわり住職のよもやま話

やさしい仏教講座(第12回)

2017年09月06日

コスモス

○此岸にいながら彼岸にわたる六つの実践(その2)
大乗仏教では、此岸にいながら彼岸の智慧を身につけるために「六波羅蜜」の実践を説きました。「六波羅蜜」とは、①布施波羅蜜、②持戒波羅蜜、③忍辱波羅蜜(にんにくはらみつ)、④精進波羅蜜、⑤禅定波羅蜜、⑥智慧波羅蜜の六つの実践をいいます。布施波羅蜜とは布施をすること。持戒波羅蜜とは戒律をもって生きること、忍辱波羅蜜とは耐え忍ぶこと、精進波羅蜜とは努力すること、禅定波羅蜜とは座禅をすること、智慧波羅蜜とはこれまでの5つの波羅蜜の実践によって得られる智慧のことです。

本当の精進とは?
本当の精進とは、血のにじむような精進ではありません。それは単に執着、執念であるということに気づかなければいけません。本当の精進、本当の努力とは、あたりまえのことをあたりまえにし、ゆっくりと着実に努力することなのです。お釈迦さまは必死で苦行を重ねた結果「中道」に気づかれました。人間らしい、ゆったりとした生き方こそ、本当の精進なのです。
 
本当の禅定とは?
本当の禅定といっても、いわゆる座禅をすることではありません。もちろん座禅をしてもよいのですが、ここでいうのは禅的な生き方のことです。つまり、仕事をするときは仕事に、ごはんを食べるときはひたすらごはんを食べる、掃除をするときは掃除に、遊ぶときは遊びに専念することです。日常のすべての立ち振る舞いを、座禅と同じように、集中してそのものになりきってせよ、ということです。わかりやすいように別の言いかたをすると゛○○をしながら○○をする゛のをやめるということです。
 
本当の智慧とは?
本当の布施、本当の持戒、本当の忍辱、本当の精進、本当の禅定、これらを実践するには、これまで私たちが常識だと信じてやってきたことを、もう一度別の方向から、別の視点で見直すことが必要だといえます。常識や世間体にがんじがらめになった生活を、もっと風通しのよい生活にする。これが本当の智慧です。

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