こだわり住職のよもやま話

やさしい仏教講座(第10回)

2017年05月24日

般若心経掛け軸

○般若心経のいう空とはなにか?

「般若心経」に「諸法空相」という言葉があります。あらゆる法(物事)は「空」という姿で存在している。つまり、物事はすべて、「空」である、という意味です。空とは、なにごとにもこだわらないこと、執着しないことです。これが彼岸に渡るための智慧だと説いているのです。

○空になれば「老、病、死」は怖くない。
老いること、病気になること、死ぬことは人間の根源的な「苦」です。「老、病、死」は、仏教に関係なく、「そりゃ、誰でもこわいと思うのが当然だ」というのが、おおかたの意見だと思います。これを苦しい修行でなんとか克服しようとしたのが、上座部仏教です。一方、大乗仏教では、老いも病も死すらこわくないと教えます。なぜならすべては「空」だからです。例えば、私たちは病気になると、早く治そうと必死なる。必死になればなるほど、病気にこだわってしまいます。大乗仏教は病気にこだわるな、と教えています。これは病気を放っておいて悪化させろ、ということではありません。健康なのが「善い」ことで、病気が「悪」だと決めつけるのは、こだわっているからです。健康な私も病気の私も、すべては「空」だということに気づかなければならないのです。さらに、病気になったからこそ、わかることもあります。家族の愛情や他人のありがたさ、そして病気の人の気持ちなど、今まで気づかなかったことを気づかせてくれたのだからありがたい、と思えば病気を苦にすることなど何もないのです。老いることも、死ぬことも同様です。これまで老いなかった人や、死ななかった人などひとりもいません。だから怖がることは何もないのです。

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