こだわり住職のよもやま話

生前戒名のありがたみ

2012年03月02日

剃度式のおかみそり.jpg

本日は生前戒名について書いてみます。間もなく山本勝正さん・睦美さんご夫婦に、昨年からお約束していた戒名の授与式を実施することになるからです。暦も3月となりました。いよいよ春も間近です。「温かくなったらやりましょうね」と云っておりましたから、そろそろ実施日を決めるタイミングです。さて、いつ頃にしましょうかね。授与式は本堂で行うので天候を気にする必要はありませんが、それでもやっぱり、お天気になるといいですよね。春だし、ウグイスのさえずりが聞こえる日に、厳かに授与できたら最高ですからね。

戒名の生前授与といえば、初めてさせて頂いたのは昨年のことでした。サラリーマン時代にお世話になった加藤正利さん・佳代子さんご夫妻への授与でした。本山(京都)へ所用で出向くことになった際に名古屋まで足をのばして、きっちり授与させてい頂きました。今回もご夫婦ですから、お二人にふさわしい戒名をお送りしたいと思っております。

ところで、生前戒名は今日ではまれなケースです。「生きているうちから戒名?、それって、人が亡くなってからの話しでしょう」と思われてる方も多いでしょうね。かくゆうこの私も、僧侶になるまではなんとなくそう思っていた一人でした。しかしこれって、本来とても良い事なんです。仏教の本来あるべき姿からすると正道なんですよ。

戒名を頂くということは、僧名を頂戴することです。そして、授与して下さる僧侶のお弟子さんになることでもあります。多くの宗派では、葬儀を行う際には、剃度式という出家の儀式(お坊さんになる儀式)を行って戒名を授与した後に、お送りすることになります。私の場合ですと、まず實空俊徳(私)の弟子になって頂くわけです。そしてそれは、私に法脈を授けて下さった前法主、憲空文有上人如道大和尚様のお弟子になって頂くことでもあります。さらには、流祖西山上人、宗祖法然上人、そしてお釈迦様へとつながる、仏弟子になって頂くことでもあるのです。我が宗派では、葬儀の際にはそういう手順を踏んだ後に引導をお渡しして阿弥陀様のもとへとお送りしています。ですから、人が亡くなると必ずお坊さんになって頂く儀式が行われます。ある意味、いたって形式的なものかもしれません。しかし、僧侶になってからあの世へ行くという考え方は、多くの宗派で受け継がれている重要な儀式なのです。

くどいですが、生前に戒名を頂戴するということは、仏教徒として大変喜ばしい事です。なぜなら、僧名を頂くことで我々は仏教徒としての自覚に目覚め、有意義な日々を送るご縁を頂くことになるからです。「僧名を頂戴したこの身だから、今頂いているこの命を大切にして生きて行こうではないか。そして、仏教の説く利他の精神、菩薩の生き方を心がけなくちゃ」と、意識することにつながるのです。要するに、そうなって頂く為の戒名授与なのです。

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