日本仏教の主要宗派について

Ⅳ.鎌倉新仏教

末法の世の危機意識から生まれ、一般大衆へ広がった衆生救済の仏教。鎌倉仏教の開祖はいずれも天台教学を学んだ後に立教開宗の道を進んでいる。

①浄土信仰の新仏教(仏道実践の手段を念仏に絞り込んだ教え)

●融通念仏宗(良忍)※カッコ内は開祖

一人が称える念仏が、たくさんの人の念仏となり、たくさんの人の念仏が、また一人の念仏に集約されると説く。
総本山大念仏寺(大阪市)

●浄土宗(法然)

「専修念仏」すなわち、ただひたすら阿弥陀仏の誓いを信じ、念仏をとなえることによって極楽浄土に往生できると説く。念仏はあらゆる功徳を修めるものであり、他の諸行に勝るものである。そして、念仏は誰でも実践できる容易な行(易行)である。それは、すべての衆生を救済しようとする弥陀の平等な慈悲心からいって仏の本願にほかならないとする。本山は知恩院・光明寺・禅林寺・誓願寺の四派がある。

●浄土真宗(親鸞)

法然の弟子であった親鸞は、師の「専修念仏」をさらに発展させて、絶対他力の教えを説き、後に浄土真宗の開祖となる。親鸞は、あらゆる自己のはからい「自力」を捨て、阿弥陀仏の本願を信じることによってのみ救われると説いた。弥陀の救済は念仏を称えたからではなく、阿弥陀仏への信心が起きた時点で救われるとする。本山は西本願寺(本願寺派)・東本願寺(大谷派)・専修寺(高田派)・興正寺・仏光寺等で主要十派がある。

●時宗(一遍)

法然の直弟子であった證空(西山上人)の弟子、聖達のもとで浄土教を学ぶ。
信仰があるなしにかかわらず、「南無阿弥陀仏」と名号を称えれば、阿弥陀仏は衆生を往生させてくれるとする。総本山は清浄光寺。

②仏陀への道を禅に求めた新仏教(仏道実践の手段を座禅に絞り込んだ教え)

●臨済宗(栄西)

生まれつき人間に備わっている人間性(仏性)を座禅によって目覚めさせ、人生を豊かに生きていくことを説く。そのために座禅と作務(日々の労働)を重要視する。臨済宗の禅は、師から与えられた難解な公案(課題)に取り組み、悟りに至るように精進する。臨済の難解な公案をたとえて俗に「禅問答」と云う。本山は妙心寺・建長寺・南禅寺・大徳寺・天竜寺等で主要十五派がある。臨済宗は室町時代に幕府の庇護により繁栄した。

●曹洞宗(道元)

即心是仏の教え。ただひたすら座禅に生き、自分の中の仏性を見いだし、この姿こそが仏であると信じること。曹洞宗の禅はひたすら座禅することで、これを只管打坐(しかんたざ)と云う。本山は永平寺・総持寺の両本山体制である。

③浄土・禅を非難し「法華経」こそがすべての新仏教(仏道実践をお題目に絞り込んだ教え)

●日蓮宗(日蓮)

末法の世には「法華経」のみが広がるべきで、よって、法華経を内包する「南無妙法蓮華経」のお題目を称えれば仏と心がつながり、この身が仏になると説く。救われるのは来世ではなく現世でなければならない。また個人ばかりではなく、社会も国家も救済されなければならないとした。
浄土教をはじめ他宗と激しく対立した歴史を持つ。
日蓮宗は排他的な教義上の性格から、内部分裂が激しい宗派であった。現在は四十派あまりがあり、これらを総称して「法華宗」と呼ぶこともある。
創価学会・立正佼正会・霊友会等は近代に派生した日蓮系の在家集団である。

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