こだわり住職のよもやま話

その頃っていい時代だったんだね

2009年12月24日

こだわり住職がフォークギターに熱中していた頃、レコードに録音されているギター演奏を再現(コピー)できることは、とても格好いいことであり自慢でした。例えば井上陽水氏の3枚目のアルバムで、日本レコード史上初のLP販売100万枚突破の金字塔を打ち立てた名作「氷の世界」には、「心もよう」という誰もがよく知っている歌が入っていました。イントロのアルペジオがとても印象的な名曲ですが、この簡単なアルペジオがきちんと弾けるだけでも当時はちょっとした自慢でした。私もこの出だしを友人に聴かせてやり、みんなで歌ったりしたものです。そうすると友人たちは「吉村は上手いのー」などと、口々にもちあげてくれるのです。「いやー、この曲は簡単やから誰でもすぐ弾けるいやー」などと否定しながらも、内心はとってもうれしかったりするのであります。そんな調子で、フォーク系の人気ミュージシャンの曲で、イントロや伴奏アレンジに特徴的な(要するに格好いい)ギター演奏が入っている曲をきちんと再現することが出来るやつは、クラスや仲間内でちょっとした人気者となれました。それは結局女の子達の注目も集めることになるのです。

あの時代、ギターを弾けるということは、かなり格好いいことでした。よってスポーツや勉強、たぐいまれなる容姿あるいは人を笑わせる才能など、人気者になれる要素を不幸にも持ち合わせなかった少年達にとっては、当時のフォークブームも手伝って、フォークギターというのは一つの光明だったと思う。私自身もその傾向が強かった。意味もなくギターを背中に担いでチャリで友人宅に遊びに出かけていたのです。ギターを下げているということは「私はフォークギターが弾けるんですよ」と宣伝しているようなものです。当時、ギター少年の大半は格好いい(本人はそのつもりの)自分を夢見てギターを弾いていたのです。彼らにとって、公園の片隅にあるベンチで一人つま弾く姿はめちゃめちゃ格好いいのです。そんな妄想が受け入れられる時代でした。

われら青春

当時、少年たちの間では民放の学園青春ドラマが人気でした。なかでも昭和49年に放映された中村雅俊さん主演の「われら青春」には、私くらいの年代はそうとう影響を受けたふしがある。このドラマの主人公中村雅俊さんが、ある時は誰もいない教室からグラウンドを眺めながら、またあるときは真っ赤に燃える夕日に染まりながら...などと、多感な青少年達の琴線に触れるであろう実においしい場面設定で、「ふれあい」をギター片手に弾き語るシーンが毎回のように流れました。少年達はテレビの前でその姿に憧れ己の姿を重ねていました。だからやたらにギターを持ってうろつく、私のようにとぼけたやつも出てきます。しかし高校生のわが息子によると「今時の若者にそんな単純なんはおらんやろうー」だとか、「ギターで、もてようなんて甘い」などとみごとに却下である。 娘からは「その頃っていい時代だったんだねー」と、とどめのお言葉を頂戴した。「あい、すいませーん」である。時の流れとともに若者の意識も変化する。「あーこれも諸行無常なり」である。ではここで一首。「世の中の、移り変わりの早きこと、父の青春よき時代かな」そのまんまであります。

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