こだわり住職のよもやま話

2017年7月25日

やさしい仏教講座(第11回)

2017年07月25日

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○此岸にいながら彼岸にわたる六つの実践(その1)
大乗仏教では、此岸にいながら彼岸の智慧を身につけるために「六波羅蜜」の実践を説きました。「六波羅蜜」とは、①布施波羅蜜、②持戒波羅蜜、③忍辱波羅蜜(にんにくはらみつ)、④精進波羅蜜、⑤禅定波羅蜜、⑥智慧波羅蜜の六つの実践をいいます。布施波羅蜜とは布施をすること。持戒波羅蜜とは戒律をもって生きること、忍辱波羅蜜とは耐え忍ぶこと、精進波羅蜜とは努力すること、禅定波羅蜜とは座禅をすること、智慧波羅蜜とはこれまでの5つの波羅蜜の実践によって得られる智慧のことです。

①本当の布施とは?
例えば、物乞いがいてお金を恵んであげるとする。このとき「あんまり少ないとケチだと思われるかな」あるいは「いい人だと思われたいから、少し奮発するか」などと考えてはいけません。物乞いがいるから、お金をあげる。それともさっさと無視する、どちらかでよいのです。これが真の布施です。あれやこれやと考えたら、それは布施でもなんでもありません。本当の布施とは、こだわりをなくしてすべきである、ということです。

②本当の持戒とは?
持戒とは戒律をもって暮らすことです。仏教では在家のひとが守るべき五戒があります。殺生をするな・盗みをするな・邪淫に溺れるな・嘘をつくな・酒を飲むな、というものです。お釈迦さまはすいぶんとむずかしいことをおっしゃると思うでしょうね。しかし例えば、嘘をつくと、それをごまかすために、また嘘をつくことになります。はじめから嘘などつかなければ、そのあとに嘘をつく必要はなかったはずです。本当の持戒とは、ただ守るだけのものではありません。戒律をもつことは、戒律が私たちを守ってくれることでもあるからです。お釈迦さまはこのことをいいたかったのです。

③本当の忍辱(にんにく)とは?
忍辱とは耐え忍ぶことです。こういうと怒りたいときに怒らず、文句もいわず我慢することだと思う人が多いでしょう。しかし、本当の忍辱とはこのことではありません。私たちは「人さまに迷惑をかけてはいけない」と常々いっています。しかし人はどこかかしらで、必ず他人に迷惑をかけて生きているものです。それを自覚せよと、仏教は教えているのです。自覚すれば「すみません」と、わびる心が芽生えて来ます。この心があれば他人の迷惑も許すことができます。忍辱とは他人の迷惑を許すことです。

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